2005年度 むさしの声優学院公演 劇団櫂新人公演
2006年3月4日・5日
吉祥寺櫂スタジオ
−HITOMI−
もう一度、自分の足で歩いてみたいと思いませんか?
もう一度、ピアノが弾きたいと思いませんか?
| 配役 |
花 |
星 |
配役 |
花 |
星 |
| ヒトミ |
藤内 美紀 |
坂本 茉麻 |
小沢 |
鈴木 慎吾 |
真坂 友和 |
| 岩城 |
仁志 初 |
仁志 初 |
佐久間 |
金子 実香 |
金子 実香 |
| 大友 |
山口 聡一 |
瀧澤 悟史 |
郁代 |
澤井 敦子 |
中 三千代 |
| 典子 |
藤田 由実 |
蜂谷 佳奈 |
朝比奈 |
野上 功 |
高木 和久 |
| 若杉 |
豊島 一也 |
渡辺 智彦 |
あつこ |
小林 純子 |
小林 由佳 |
CAST
STORY
「さあ、立って。」
「はい。」
「歩いてみましょう。
右足を、ゆっくり前に出して。」
「怖いです。」
「あなたは自分の力で立ち上がったんだ。 歩くことだって、きっとできる。」
水谷ヒトミはピアの教室で子どもたちにピアノを教えている。母、郁代は著名なピアニストで、海外を飛び回っている。一年前、恋人・小沢との待ち合わせ場所に向かう途中、交通事故に遭ったヒトミは、首から下が全く動かなくなってしまった。失意のヒトミは小沢に別れを告げる。
半年後、ヒトミは担当医師の大友から二人の医師を紹介される。岩城と佐久間は開発中の「ハーネス」のモニターに選ばれたことを告げる。「ハーネス」は意志を直接、身体に伝えるための装置で、これを着ければもう一度、自分の足で歩くことができるのだ。ピアノを弾くこともできる。
「私のことを心配してきてくれたのはうれしいよ。でも、こんな所まで来ちゃって、平気なの?」
「会いたかったのよ、典子に。」
「お二人が研究しているのは、脳の命令を直接筋肉に伝える装置なんです。」
「ハーネス」を着け、長く厳しいリハビリを乗り越えたヒトミは半年後には普通の人と変わらないほどに身体を動かすことができるようになった。それは医師達の想像を超える回復だった。しかし、あんなに好きだったピアノに触れようともしない。岩城医師は何とかピアノを弾かせようとするが・・・。
身体の動きを全て視覚で調整しているヒトミは、動きが複雑になり意識を集中させ続けることで、脳に負担がかかり極度の不眠症になっていた。検査の結果、医師達は「ハーネス」の開発を中止するという結論に達する。「ハーネス」を着けて半年、ヒトミは再び自分の身体を失うことになった。
「何だかかわいそうね。誰にも弾いてもらえなくて。」
「10日目。もはや、彼女はハーネスの負担に耐えられない。それが、ハーネスの構造上の問題なのか、彼女の適応性の問題なのか、疑問は残る。」
手術を前に、ヒトミは病院を抜け出した。行き先は子供の頃を過ごした下田のホテル。幼馴染の典子に会いたかっただけだというが・・・。病院に戻ろうとしないヒトミに小沢は1年前の事故の日、プロポーズするつもりだったことを告げる。今も気持ちは変わらないと。
ヒトミを迎えに来た母と大友から逃げるように姿を消すヒトミ。心当たりがあると言う典子の言葉どおり、近くの砂浜にいた。自分の身体はもう死んでいるんだというヒトミ。今の自分にとって一番大切なものは?浜辺に来た小沢に身体が動いた頃の自分を思い出して苦しいから顔も見たくないと言い駆け出すヒトミ。突然倒れてしまう。
「じゃ、これは?俺の手は冷たいか?」
「・・・・温かい。」
「ピアノはなんて言ってた?」「わからない。でも、私は凄くうれしい。」
「そこにいてね。」
「ああ、そばにいるよ。」
「ハーネス」の状態を観る為駆けつけた岩城と佐久間に病院に戻ると告げるヒトミ。例え指が動いても感じることの出来ない自分にはもうピアノを弾くことは出来ないと、昔の自分に戻ることは出来ないと考えていた。そんなヒトミに小沢は問いかける。潮の匂いは?夕焼けの眩しさは?風の冷たさは?
病院に帰る朝、ヒトミはピアノを弾いてみる。ゆっくり、静かに。皆が見つめる中、ヒトミはピアノを弾きつづける。ヒトミはもう1人ではない。